大学入試センターは、11月9日に、現高校1年生が受験する「令和7年度大学入学共通テスト」の試作問題等を公開しました。
大学入学共通テストは、国公立大学だけでなく私立大学の入試でも利用することが多い、重要なテストです。
令和7年度からはこれまでと出題内容が変更されるため、それがどう変わる予定なのかを示したのが「試作問題」です。
公開された各教科の試作問題を見ながら、今後どのような点に気を付けて勉強をしていったらよいのか、2回に分けて解説します。
今回は国語、地理歴史・公民、英語です。
高校1年生では、まだ学習していない内容の問題が大半なので、試作問題を「解く」必要はありません。ポイントを一緒に「見て」いきましょう。
【国語】「文章や図・グラフを結び付けて考える力」も問われる!
国語は、これまで4つの大問を80分で解く構成でした。
・現代文(論理的文章)
・現代文(文学的文章)
・古文
・漢文
ここに、新たな1題が加わり、解答時間が90分に伸びます。
今回その新たな問題の例として2題が公表されています。
リンク先のPDFファイルの2枚目(1ページ)から始まる問題を、まずはざっとながめてみてください。
以前からある「国語の問題」のイメージと違い、横書きの文章があり、図やグラフがたくさん出てきます。
国語は、評論文や小説、古文、漢文を読んで「読解・解釈する教科」という面も残りますが、新たに、「日本『国』の言『語』」を使って「考え、表現する教科」でもあると捉えなおしましょう。
この試作問題で問われているのは、大学等で論文を書くときに必要とされる力と言えます。
高校で言うと「総合的な探究の時間」や「課題研究」(学校によって名称が異なるかもしれません)の授業で養う力です。
テーマを決めて情報を集め、分析し、それらの資料を根拠に自分の意見・主張を考え、文章や口頭で表現するような学習を行っていると思います。
つまり、ここで問われているのは、必ずしも国語の授業だけで身に付ける力ではなく、さまざまな学校活動の中で「日本『国』の言『語』」を使いながら養っていく力だと言えます。
【地理歴史・公民】「たくさん覚える」だけではダメ!
地理歴史・公民は、6つの出題科目から選択することになります
・地理総合、地理探究
・歴史総合、日本史探究
・歴史総合、世界史探究
・公共、倫理
・公共、政治・経済
・地理総合、歴史総合、公共(から2つを選択解答)
高1では「歴史総合」を勉強していることが多いので、ここでは『歴史総合、日本史探究』を例に見ていきましょう。
リンク先の2枚目(1ページ)から問題が始まっています。
第1問と第2問が「歴史総合」の範囲、第3問から第6問が「日本史探究」の範囲からの出題です。
第1問の冒頭を見ると、「歴史総合の授業で、『人やモノの移動とその影響』という主題を設定し、 環太平洋地域を取り上げて、各班で発表をまとめた。」と書かれています。
第2問以降も、また地理歴史・公民の試作問題のほとんどで、このような授業を中心とした学習場面が設定されています。
つまり、学校の授業をただ聞いているだけでなく、自分でしっかり考えることができているかどうかをテストで測ります、というメッセージと言えます。
地理歴史・公民を、「たくさんのことを覚える教科」と思っているとしたら、とらえなおす必要があります。
特徴的な問題が12枚目(11ページ)の問9です。
いつ、だれが、何をしたか、というような記憶した知識を問うのではなく、「このようなことを探究するときに必要な資料は何ですか」と、勉強の過程でどのように考えるかということが問われています。
このように、覚えた知識を再現するのとは違う、考える力が求められていることに注意して授業に臨みましょう。
【英語】日々の授業への取り組み方も問われる!
英語はリーディングの試作問題を見てみましょう。
試作問題は2つあります。
第A問では、「『授業中における生徒のスマートフォン使用の是非』というテーマで自分の意見を述べる文章を書く場面」という設定。
第B問では「英語の授業で『環境に配慮したファッション』をテーマとした文章作成において、先生の添削コメントを見て推敲する場面」という設定です。
自分の意見を英語で表現したり、添削コメントを受けて推敲したりする普段の授業を中心とした過程の中で、どのように考え、よりよい表現にしようとしているかが問われていると言えます。共通テストはマーク式のテストではありますが、ライティングの授業と深く関係した問題も出されます。
高3になってからたくさん勉強して詰め込んで受験勉強を乗り切る、というよりも、高1のときから授業や日常の学習活動にきちんと取り組むことが大切だということがわかります。
国語、地理歴史・公民、英語に関しては以上です。
次の記事では、数学、情報、時間割のポイントを一緒に確認していきましょう。
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<この記事を書いた人>
進研ゼミ高校講座 西島 一博
ベネッセ文教総研所長。株式会社ベネッセコーポレーションで、高校、中学校、小学校対象のさまざまな教材開発に携わる。2016年度より高校用教材・生徒手帳等の制作・販売を行うグループ会社、株式会社ラーンズの代表取締役社長を務め、2021年度より現職。ベネッセ文教総研では、主として中高接続、高校教育、高大接続の領域での研究、情報発信を行っている。
※この記事は、公開日時点の情報に基づいて制作しております。
袖白雪
2022年12月 8日 16:36
分かりやすくまとめてあってとても読みやすかったです。新傾向大学入試のことがよくわかって、モチベーション上がりました。
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