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共通テストでフランス語を選ぶと有利?その真相と注意点

入試情報
2024/12/18
共通テストでフランス語を選ぶと有利?その真相と注意点

大学入学共通テスト(以下、共通テスト)で受験する教科を「英数国理社」などと略すことがありますが、この中の『英語』は、実は教科ではなく科目名。共通テストにおいては、「外国語」という教科の1つとして、『英語』という科目があるという位置付けです。

『英語』以外の「外国語」科目は何かというと、『ドイツ語』『フランス語』『中国語』『韓国語』。英語が苦手な人は、「もしかして、英語よりもっと点が取りやすくて有利だったりしないかな?」と思うかもしれません。

例えば『フランス語』はどうでしょうか。高1・2から準備すればねらい目になり得るのか、チェックしてみましょう。

共通テスト『フランス語』の試験形式は?

共通テスト『フランス語』の特徴:リスニングなしの試験形式

まずはおなじみの『英語』の形式から。『英語』は、「リーディング」(80分、100点)と、「リスニング」(60分、うち解答時間30分、100点)の2つに分かれています。リーディングとリスニングの点数を足すと200点満点です(大学・学部・学科によっては、 点数 の配分を変えることがあります)。

『フランス語』は、「筆記」(80分、200点)のみです。リスニングがありません。 現状の共通テストの時間割では、外国語は1日目の最後の科目です。英語』の受験者はリーディングのあとにリスニングを受けますが、『フランス語』の受験者は筆記のみですので、先に帰れます。これは、他の『ドイツ語』『中国語』『韓国語』も同じです。

なお 解答形式は、英語と同様すべてマークシート です 。

『フランス語』と『英語』、両方受けられる?

事前に何も手続きをしないと、当日は英語の問題しか配られません。『フランス語』を含む英語以外の外国語で受験する場合、共通テストの出願時に、『ドイツ語』『フランス語』『中国語』『韓国語』の受験希望欄にチェックを入れます。

そうすると当日は、『英語』の問題冊子と、他の4言語をまとめた問題冊子の2つが配られます。 試験が始まってから、両方の冊子を見て、好きな言語を選べます。

試験時間は「外国語」として設けられていますので、解答できるのはいずれか1言語です。 『フランス語』と『英語』の両方を受けて、よかった方の成績を使うことはできません。

共通テスト『フランス語』の受験者数とその割合

『英語』の受験者数の0.02%ほど

共通テスト「外国語」の科目別受験者数(本試験).jpg

*大学入試センター「過去の試験情報」を加工して作成

2024年度の受験者数は、45万人近い『英語』に対して、フランス語は90人でした。 外国語の受験者全体のうち、英語 選択 者が99%以上。フランス語は約0.0 00 2%、5000人に1人の割合 です 。

一緒にフランス語を学んでいる同級生 や 、フランスに住んでいたときの 同年代の 知り合い など がいない限り、周りでフランス語受験希望者を探すのはかなり難しいレベル ですね 。

共通テスト『フランス語』で受験する注意点とデメリット

『フランス語』では受験できない大学・学部・学科がある!

入試に共通テストの外国語を課している大学で、『英語』を使えない大学・学部・学科はありませんが、 『フランス語』を使えない大学・学部・学科はあります。

202 5 年度入試の一般選抜で、例えば弘前大は、全学部で共通テストに英語を課してい ます が、 『フランス語』 をはじめ英語以外は使え ません 。

山形大は、工学部のみ、『フランス語』 をはじめ英語以外 が使えません。なお医学部は、『フランス語』と『ドイツ語』は使えますが、『中国語』と『韓国語』は使えません。

国公立大の個別試験での『フランス語』受験について

国公立大の一般選抜では、原則、共通テストと個別試験を受けることになります。共通テストで『フランス語』が使える大学はそれなりに数がありますが、個別試験の外国語を英語以外で受けられる大学は、一部しかありません。 国公立大の場合、個別試験も含めれば、英語が必要になるケースが多いと言えます。

フランス語だけで入試を乗り切りたければ、個別試験でフランス語が選べる大学をあらかじめ探しておきましょう。すでにフランス語が得意で、あまり勉強しなくても高得点が取れる人であれば、共通テストは『フランス語』を選んで得点を稼ぎ、個別試験は英語の対策をして臨む、という戦略もあります。

私立大も『フランス語』で受験できる?

私立大も、個別試験をフランス語で受けられる大学は一部です。ただ、 共通テスト利用入試であれば、フランス語の利用を認めている例が少なくありません。 例えば明治大の 2025年度入試(前期日程)では、国際日本学部と総合数理学部を除いて、フランス語 を 利用でき ます 。 入試で英語をいっさい使わないつもりなら、私立大の共通テスト利用入試は有力な選択肢です。

共通テスト『フランス語』の問題構成

『英語』の構成と比べてみよう

共通テストの『英語(リーディング)』は、発音・アクセントや文法を直接問う問題は出ないことになっています。文章量の多さが特徴で、小説や論説などの一般的な長文読解のほか、会話を題材にした問題、書類やデータを読み取る問題など、英語を実際に使う場面を想定した出題が多いことで知られます。

『フランス語』はどうでしょうか。 2024年度は 以下のような 構成でした。

共通テスト『フランス語』『英語(リーディング)』の出題内容(2024年本試験).jpg

*大学入試センター「過去3年分の試験問題」より

『フランス語』の 問題数は 『 英語 』 より多いですが、 全体のボリュームは少ないため、『英語』ほど解答スピードを気にする必要はなさそうです。 リスニング対策も不要です。

ただし、 『 英語 』には ない、 発音、文法・語法を直接問う問題が、『フランス語』にはあります。 高得点を ねら うには、これらの細かい知識も正確に身につけておく必要があります。

共通テスト『フランス語』の難易度と平均点

共通テスト『フランス語』の過去の平均点は?

過去に実施された共通テストの平均点を見てみましょう。

共通テスト「外国語」の平均点(本試験).jpg

*大学入試センター「過去の試験情報」より

2023、2024年度は 『フランス語』 が 『 英語 』 を上回っています。ただし、 『 英語 』 受験者には英語が苦手な人もいるのに対し、 『フランス語』 は、自信がある人しか受けていない可能性があります。平均点が高い年が続いたからといって、英語より簡単だとは言えません。

共通テスト『フランス語』の難易度を資格試験と比較。どのくらいのレベル?

CEFR(セファール)と呼ばれる、言語の能力を示す国際標準の指標があります。外国語学習者の習得レベルを、最も基本段階のA1から、最も高レベルのC2まで、6段階で評価します。

共通テストの問題作成方針によると、『英語』の難易度の目安は、 CEFRの概ねA1~B 1で す。英語検定試験の一つであるGTECのスコアであれば1200弱、実用英語技能検定(英検 (R ))であれば2級の上位か準1級の中位レベルであれば、ほとんどの問題に対応できると考えられます。

『フランス語』の問題を解いた人の感想を調べると、英語と同じくA1~B1程度と感じる人が多いようです。 実用フランス語技能検定試験で2級の上位か準1級の中位レベルであれば、ほとんどの問題に対応できるでしょう。

※英検(R)は公益財団法人日本英語検定協会の登録商標です。

『フランス語』の対策のしやすさは?

英語はしっかりと授業時間が設けられ、共通テスト対策を行う学校も珍しくありません。参考書や問題集も豊富です。

フランス語は、授業を設けている高校があまりありません。学校が共通テスト 対策を行うのはレアケースだと考えられます。受験者数が例年 100人前後ですから、 共通テスト専用の参考書や問題集は見つかりにくいと考えられます。 模擬試験もおそらく行われていないでしょう。

帰国生なら高得点も望める?

外国語が使えるからといって、日本でつくられたテストに必ずしも対応できるとは限りません。

とはいえ共通テストの場合、『 英語 』でも『フランス語』でも、 ネイティブであれば相当な高得点が期待できそうです。 フランスで過ごした経験があって、英語よりフランス語を使い慣れているという人であれば、共通テストでも英語より簡単に感じられるでしょう。

共通テスト『フランス語』受験のメリットとデメリット

ここまで見てきたメリットとデメリットをまとめ ました 。

共通テスト「フランス語」受験のメリット・デメリット.jpg

高 1 、 2の時点で英語よりフランス語の方が得意だという人であれば、 共通テストで『フランス語』 を選択することにより、受験を有利に運べる可能性も出てきます。

高 1、2の時点ではフランス語になじみがない人が、ゼロから勉強を始めて英語より有利な状況をつくれるかは、人によるでしょう。

「英語に比べると問題のレベル自体が易しい」「英語の出題のような高度な情報処理能力が不要で解きやすい」と 言う 人もいますが、周囲にフランス語を教える人、学んでいる人が少ない環境で、一人で対策を進めていくのはなかなかにハードです。

共通テストで『フランス語』受験 を検討している人は、入試での合格可能性はもちろん、入学後の必要性についても頭に入れて、慎重に考えてみてくださいね。

進研ゼミ√Routeの『共通テスト徹底解剖News !』 では、今後も共通テストに関するニュースや、読んで得する情報を発信していきます。ぜひご期待ください!

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<この記事を書いた人>
株式会社オンソノ
教育情報や受験情報に詳しい編集プロダクション。15年以上に渡り、高校生や大学生、高校教員、大学教員の取材をおこなってきました。受験情報誌や保護者向けのWebサイト、教育関係者向けの専門記事を数多く手がけています。