「国公立大志望者のための試験」というイメージがある共通テスト。
「私立大に進みたいし、個別試験で合格をめざすから、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)を受験しなくてもいいのでは?」と考える人もいるのではないでしょうか。
しかし、最近は多くの私立大が共通テストの成績を活用する「共通テスト利用入試」を実施しています。
私立大志望者もこの方式を使うことで、合格のチャンスを増やすことができます。
この記事では「共通テスト利用入試」の活用を含め、私立大志望者が共通テストを受験することのメリットと注意点について紹介します!
共通テスト利用入試とは? 私立大学入試での「共通テスト」活用法
私立大の一般選抜で、共通テストの成績を利用して合否を決める方式のことを「共通テスト利用入試」と言います。
近年、共通テスト利用入試を実施する私立大が増えていて、全私立大の約85%が共通テスト利用入試を実施 しています。
*文部科学省「令和5年度 学校基本調査」、大学入試センター「令和5年度大学入学共通テスト利用大学・専門職大学・短期大学数について」より算出
共通テスト利用入試は、大きく分けて 「単独型」と「併用型」の2種類 があります。
●単独型...共通テストの成績のみで合否を判定する
●併用型...「共通テストの成績」+「大学の独自試験の結果」で合否を判定する
併用型には、例えば理工学部の入試で「数学や理科の力は大学の独自試験で測り、英語の力は共通テストの成績で確認する」といったパターンがあります。
私立大志望者が知っておくべき共通テスト利用入試のメリット
では、共通テスト利用入試のメリットについて詳しく見ていきましょう。
メリット1│第1志望大の合格のチャンスを広げられる
私立大は、一般選抜に、日程別の方式や全学部統一入試など、さまざまな入試方式を用意しています。
第1志望の大学を受験する際は、多様な入試方式に加えて、 共通テスト利用入試を組み合わせることで合格のチャンスを増やせます 。
メリット2│併願大対策の時間を削減できる
複数の私立大を併願する場合、共通テストの成績で出願できるので、 大学別の過去問対策をする時間を減らせます 。
例えば、私立大を4校受験する場合、第1志望、第2志望は過去問の対策にじっくり時間をかけ、第3志望、第4志望は共通テスト利用入試でチャレンジするという作戦も可能です。
メリット3│遠方の大学を受験する負担が減る
地方の高校生が首都圏や関西圏の大学を受験するのは大変ですが、共通テスト利用入試を使えば、 地元にいながらにして受験 できます。
交通費や宿泊費を低く抑えることができます。
試験会場まで移動しなくてもよいので、 時間の節約、体力の温存 にもつながり ます。
受験スケジュールが立てやすくなるでしょう。
メリット4│一般方式と比べて受験料が安い
共通テスト利用入試の 受験料は、一般方式と比べて低く抑えられています 。
一般方式の受験料は3万5000円程度の場合が多いのですが、共通テスト利用入試の場合、1万5000円程度の大学が多く見られます。
一般方式とうまく組み合わせれば、全体の 受験費用の節約も可能 でしょう。
共通テスト利用入試のデメリットと注意点
メリットばかりのように感じる共通テスト利用入試ですが、よい面ばかりではありません。デメリットも押さえておきましょう。
デメリット1│募集人数が少ない
一般方式と比較して、 共通テスト利用入試は募集人数が多くありません 。
例えば、早稲田大・社会科学部の2024年度入試の募集人数は、一般方式が450人に対して、共通テスト利用方式は50人となっています。
明治大・商学部は学部別入試が500人に対して、共通テスト利用入試が140人です。
一般方式と比べると 狭き門になるので、共通テスト利用入試だけで第1志望大合格をねらうのはリスク が伴います。
また、共通テスト利用入試は手軽に受験できるため、多くの受験生が出願します。
志願者に対して募集人数が少ないので、志願倍率がかなり高くなります 。
ただし、大学側は入学辞退者を見込んで実際の募集人数よりも多くの合格者を出すのが一般的です。
実質倍率(合格者数÷受験者数)はそれほど高くない場合もあるので、志願倍率よりも実質倍率に着目しましょう。
デメリット2│共通テストの受験前に出願締め切りがある大学も
国公立大の場合、共通テストを受験したあと、自己採点の結果を見てから出願 します。
私立大の共通テスト利用入試の場合、共通テスト実施日前に出願を締め切る私立大も少なくありません。
出願の見極めがより難しいのがデメリット と言えます。
模試の結果から共通テストの成績を予測して、出願する大学を決める必要があります。
私立大志望者が共通テストを受験するメリットとその理由
ここまでは「共通テスト利用入試」の話を中心に説明してきましたが、次は共通テストを「受験することそのもの」のメリットとデメリットを解説していきます。
共通テスト受験のメリット:入試本番の雰囲気に慣れる
私立大の一般選抜のシーズンは1月下旬~2月下旬です。
共通テストはそれよりも早く、1月中旬に実施されます。
共通テストを受験しておくことで、 入試本番の雰囲気に慣れる ことができるでしょう。
また、私立大入試直前に自分の実力を知る貴重な機会にもなります。
共通テスト受験のデメリット:共通テスト独特の出題形式への対策が必要
共通テストは高校の学習指導要領に沿った問題が出るので、基本的に難問・奇問は出題されません。
しかし、文章量が多い問題や、資料を読み解く問題も多いので、出題形式や傾向に慣れるための対策が必要です。
あまり共通テスト対策に時間をかけすぎると、 本来やるべき私立大の入試対策が不十分になってしまう可能性も 。
私立大対策と共通テスト対策のバランスに気をつけなければいけません。
共通テスト受験が必須の私立大に要注意!
少数ですが、 一般方式で共通テスト受験を必須としている大学もあります。
早稲田大の政治経済学部、国際教養学部、スポーツ科学部の一般選抜は、「共通テスト+学部独自試験」の形になっていて、共通テストの受験が必須です。
2025年度入試からは社会科学部、人間科学部も同様の形になります。
立教大学は文学部以外の学部は、独自の英語試験を実施していません。
受験生は共通テスト、もしくは英語の外部検定を受けなくてはいけません。
外部検定を利用しない人は、共通テストが必須になります。
現段階では、共通テスト必須の大学は多くはありませんが、気になる大学の入試情報を早めに調べておきましょう。
進研ゼミ√Routeの『共通テスト徹底解剖News!』 では、今後も共通テストに関するニュースや、読んで得する情報を発信していきます。
ぜひご期待ください!
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<この記事を書いた人>
株式会社オンソノ
教育情報や受験情報にくわしい編集プロダクション。これまで15年以上に渡り、高校生や大学生、高校教員、大学教員の取材を行ってきました。受験情報誌や保護者向けのWebサイト、教育関係者向けの専門記事を数多く手がけています。
※この記事は、公開日時点の情報に基づいて制作しております。
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