部活の後やお風呂上りにのどをうるおすのに、欠かせない「水」。
普段は深く考えることはあまりないかもしれませんが、実は環境を守るうえでも大切な資源です。
今回は未来をになう子どもたちに向けて「水育(みずいく)」という活動を行っている、サントリーホールディングス株式会社の森揚子さんと、サントリーパブリシティサービス株式会社の田中省伍さんに、お話を伺ってきました。
この記事を通じて、未来について、環境について、ちょっとだけ考えてみませんか?
※お2人に伺った内容を1つにまとめています。
「水育(みずいく)」とはどんな活動ですか?
自然や水の大切さを学ぶ次世代環境教育
サントリーは、水や自然の恵みをお客様へお届けする会社です。
その生命線である良質な地下水を守るために、水源エリアの森を守り育てる「天然水の森」活動や、美しい水を未来へとつなぐ環境活動を行っています。
その想いを、次の時代を担う子どもたちに伝えたく、20年近く前から続けているのが、サントリー独自の次世代環境教育「水育」です。
「水育」の活動の一つ、「森と水の学校」は、天然水の採水地である白州、奥大山、阿蘇で行っている自然体験プログラムです。
2020年からは、コロナ禍でも子どもたちが自然を体感できるように、自宅から参加できるオンラインのプログラムも用意しました。
ドローンで撮影した映像を使って、虫や鳥の視点で森の中をとび回るというオンラインならではの映像や、スタジオ講師とのライブでのやりとりが楽しめます。
もう一つの活動は、小学校に出向いて行う、4、5年生向けの「出張授業」です。
森や水を守るために一人ひとりに何ができるかを考えてもらう授業を、学校の先生と一緒に行います。
例えば、森に降った雨が、川になって海に注いだり、人に使われたり、蒸発して雲になったりといった「水の循環」。
これをすごろく形式のアクティビティで学んだり、森のはたらきがわかる実験の映像を見たりと、主体的な学びを目指した授業になっています。
子どもたちに向けて活動しているのはなぜでしょう?
世代を超えて活動を引き継いでいくため
森を守る活動は、すぐに成果が出るものではありません。
また、森に降った雨が天然水になるまでには、およそ20年以上かかります。
今、水を飲めるのは数十年前の自然の豊かさのおかげ。
今、保全活動を行うのは、数十年先の未来にも美しい水を引き継ぐためです。
未来に水を引き継ぐためには、これからの社会を担う子どもたちに自然や水の大切さを実感してもらうことが大切です。
子どもたちに知ってほしいのは、森、特に土の役割。
森の土が雨を受け止められないと、地中にしみ込んでいきません。
受け止めるのに適しているのは、空気を含み、水を蓄える空間が豊富な、ふかふかの土です。
「森と水の学校」や「出張授業」では、森の土に触ったり、水をかけたりして、ふかふかの土とはどんな土なのかを体感します。
そして、こうした土を育んでいるのが、森の中の多様な動植物であることに気づいてもらいます。
以前「森と水の学校」で、初めて入った森で怖がっている子どもがいました。
ところが、目をつぶって深呼吸をしてもらうと、ほっとした笑顔を見せて、一気に明るさを取り戻しました。
澄んだ空気や土の柔らかさに触れ、虫や鳥たちの声からたくさんの生命に囲まれていることを知り、森のぬくもりを感じ取ってくれたのかもしれません。
こうした子どもたちの気づきを増やすことが活動の目的であり、そこに立ち会えるのが私たちの喜びです。
20年後、どんな世の中になると思いますか?
自然に触れる体験が、より価値あるものに
日本は豊かで健全な森が広がっているように思われがちですが、原生林はほとんどありません。
そして、一度人が手を入れた森は、保全しないと維持できないのです。水を育んでくれるのは健全な森です。
水を育む森を守っていくことがサントリーの責務と考え、20年後、50年後、100年後を見据えて活動しています。
この10年だけを見ても、AIにスマートフォンにと科学技術は大きく進歩し、勉強のツールも仕事のやり方も変わりました。人々はこの先も新たな技術を生み、生活を変えていくでしょう。
ただ、森をはじめとする自然は何億年もかけて育まれたもので、一度壊してしまうと、簡単には人の手でつくり直すことができません。
自然の中に身を投じ、人がつくり出せないものに触れて感動を得ることの価値が、将来はますます高まるのではないでしょうか。
未来に向けて、高校生ができることはありますか?
体験が生む感情や疑問を掘り下げる
情報機器が充実した現在、多くの知識を家の中で得られるようになりましたが、自ら体験を通して得た知識は実感が伴っている分、自分とのかかわりがより深くなるはずです。
環境問題で言えば、単に「自然を守ろう」と言葉で聞くのと、自然に触れて「すがすがしい」「やわらかい」「あたたかい」といった実感と共に「守りたい」という気持ちが芽生えるのとでは、思いの強さが大きく異なるでしょう。
外出が制限され、足を運んでの体験が難しい昨今ですが、自然や人と直接触れ合う機会を大切にしてほしいですね。
また、「疑問に思う」ことも実感の一つです。
自分の家の蛇口から出るこの水は、どこから来ているのだろう。台所に流した水は、どこに行くのだろう。
当たり前だと思えることに「なぜ?」と問いを投げかけてみると、その当たり前がどうやって支えられているのかを考えるきっかけが得られます。
生活と環境は、必ずつながっています。
いきなり地球規模の抽象的な「自然」を考えるのではなく、身近なものごとから徐々に視野を広げていくことで、環境問題を自分ごと化できるのではないかと思います。
\サントリー次世代環境教育「水育(みずいく)」/
<この記事を書いた人>
取材・文 / 児山雄介(オンソノ)
進研ゼミ高校講座
※この記事は公開日時点の情報に基づいて制作しております。
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